黒髪から白髪になる時を経て

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黒髪から白髪になる時を経て

名も無い頃から母の心音と共に生き いざこの世に生を受けたとき 私を囲む父と母の微笑みが優しかったことを 覚えていないけど、肌で感じることはできました 白いおくるみに優しく包まれて 母の胸の中スヤスヤ寝ていた赤子の私 泣くこと、怒ること、言葉にならない笑い、でしか 想いを伝えられなくても 抱っこ、オムツ、ミルク、沢山の愛をくれました 歯が生えそろったとき 白い歯を見せびらかしたくて「よく笑う子だね」と 祖母に言われていたよ、と数十年後に聞きました 父と母の話に早く混ざりたくて 大人の言葉を使っても人を傷つけるだけだと知ったとき 学校に行って勉強するという意味を思い知りました ありがとう、ごめん、おはよう、おやすみ この単純な挨拶の大切さは知っています これに、もうひとつ加えられることはまだ知りません 友達との遊びが楽しくなって父と母の顔を見ることが少なくなり いつの間にか増えていた白髪の数も いつの間にか抜けていた歯の数も いつの間にか深く刻まれたしわの数も いつの間にか忘れていた私への想いも 思いやることを忘れていました 私に最愛の人が出来たとき ありがとう、ごめん、おはよう、おやすみ、 そして あいしてる 父と母にもいつか言える日が来ることを夢見てた言葉 黒髪から白髪になる時を経て、 あいしてる。image=496947910.jpg
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