源平合戦

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季節は冬、外の冷たい風とは対照に、街はもうすぐ訪れるバレンタインのための装飾でピンクや赤などの温かい色合いに染まっている。 その色や、可愛らしいハートの装飾は、商店街なんかの人が多く集まるところなら、他よりいっそう目にする。 そんな、商店街のどこのお店もバレンタインムード一色に染まる中、ポッカリと穴が開いたように普段と何ら変わりない景色をしている場所がある。 『喫茶店和歌』 鉄製の袖看板にそう書かれた、どこか懐かしさを感じさせるアンティークなお店。 メニューは、ほんのちょっとした軽食と、喫茶店によくある飲み物など、特に変わった様子もない、普通にオシャレな喫茶店。 であるように見える、外からは。 実際中に入ってみると、そこは変わったものがたくさん。 その中で、特に変わっていると思うのは、メニュー表の一番上、『悩めるあなたへ』と書かれた値段は0円の、一見何かの詐欺かと思えるものがメニューに存在すること。 いったいどんなメニューなのか、今はまだ見たことがない。 そして、この喫茶店で最も変わっているもの、それは……。 「明日香さん」 「はっはいぃ!!」 突然背後から聞こえた声に驚いて勢いよく振り返る。 すると、そこにはまさにこの喫茶店で最も変わったものである詩輝さんの姿。
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