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「いい加減にしろよ!あんたは、いつまで、俺達を困らせたら、気がすむんだよ!」
空は鉛色。まるで、今の俺の心の様だ…。
俺が、対峙しているのは、母方の叔母、美佳。
「ここは、今、あんたが、文句垂れる場所じゃないんだよ。…ちょっとは、多恵叔母さんの気持ちを、考えてやれよ、血を分けた妹だろう。」
「彰、あなたに、血を分けたとか、言われたくはないわね。姉さんのせいで、私が、どんな思いをしてきたと思ってるの。
血を分けた妹を裏切った、秋穂姉さんの息子である、あなたにだけは、言われたくないわよ。」
「…どういう意味だよ!」
激昂しそうになっている俺を、止めたのは、千秋だった。
「彰、もうやめて。…今は、叔母様と揉めてるときじゃないでしょ。」
その時は、周りの視線が、俺達に注がれているのにも、気付いてなかったんだ。
「…そうだな。ごめん、千秋。」
反省して、項垂れてる俺に、千秋は、
「さあ、やること一杯あるでしょ。」
そう言って、何もなかったかのように、背中を押した。
だから、仕方なく、その場を千秋に任せて、俺は、やりかけの用事を片付けにいった。
「…美佳叔母様、彰が、失礼して申し訳ありません。
多恵叔母様は、向こうのお部屋で、お休みになっていますので、お顔を見せて、元気づけてあげてください。
今、業者の方が、祭壇のご用意をされているので、少しばかりお待ちいただけますか?」
下手に出られては、美佳も、文句は言えない。
「…奥にいるのね。わかったわ。」
それだけ答えて、黙って奥の部屋へ、お悔やみを言いに入っていった。
「…千秋。悪かったな。」
「彰が、腹を立てる気持ちは、私もわかってる。でもね、二人して、叔母様に噛みついても、仕方ないでしょう。
芳樹叔父様、きっと、空の上で溜め息ついてるわ。またやってるのかって…。」
本当に、いつまで、こんな不毛な言い合いをし続けなきゃならないんだろうか…。
美佳叔母さんの口から、母さんが、叔母さんを裏切ったなんて言葉を、俺は、初めて聞いた。
母さんと美佳叔母さん、そして、多恵叔母さん。三人の関係を、あまり深く聞いたことなかったと、今更ながらに、気が付いた。
外は、俺の心を映すように、更に暗くなり、今にも雨が降り出しそうだった…。
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