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「俺、生まれる前から、手を煩わしてたんだ。」
「それは、お前の責任じゃない。たまたま、そうなったってだけで、千秋の責任でもない。
その時は、見つけたのも早かったし、処置がよくて、一度は家へ戻ってこれたんだからな。
しばらくして、本物の陣痛がきた時、その陣痛の間隔がおかしくなっててな、痛みで、千秋の意識がなくなっちまって、結局、救急車呼ぶ羽目になった。
病院では、胎児の心音も下がって、母子共に危険な状態だって言われて、俺は、もう気がおかしくなりそうだった。だから、帝王切開になってしまったけど、無事に生まれてくれて、本当によかったって、思ったんだよ。安堵したら、嬉しさと相まって泣いちまったよ。
もしも、このまま、二人とも俺の手の届かないところへ行ってしまったらって考えたら、めちゃくちゃ怖かったし、悲しかった…。
親父も、きっとそうだったんだよな。俺みたいに、恐怖してたと思う…。
その上、子供を諦めないといけなくて、悲しかっただろうし、辛かったと思う。追い討ちを掛けるように、母さんの体のことを聞いて、更に、どん底へ突き落とされた気分だったんじゃないのかな…。」
「…子供を授かるのは、奇跡なんだと、誰かに聞いたことがあります。俺達は、みんな奇跡の子供なんですよね。そして、次の世代に、また子供を残せたって、ものすごいことなんですよね。」
「そうだな、奏多。俺達は、恵まれているんだ。この世に生んでもらえたことだけでも、感謝しなくちゃな。」
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