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弔いの準備は、淡々と進められている。これは、既に、想定されていたこと。事前に、芳樹叔父さん自らが、俺に、託した最期の仕事。
はあ…。
溜め息が出る。
「速水さん、昴さんが、明日の受付の段取り聞いてこいって。」
「ああ、そっちは、丸岡の面子で仕切ってくれてんだよな。」
「助っ人は、洋祐ね。」
「香典も、和樹に任せていいか?」
「誰でもいいなら、明日は、浩史が来るから、頼んでいいかな?あいつなら、人当たりソフトだし、きっちりしてるから。」
「そうだな。浩史なら、適任か…。じゃあ、それ、横山に、伝えといてくれ。後、浩史本人にもな。」
「わかった。」
そう返事して、和樹が、横山達のいる会場の方へ、行こうとした時だ。
「…なんで、あの子に、全部任せてるの!」
奥から、美佳叔母さんの大きな声が聞こえてくる。
「…はあ。…どうせ、なんで、俺が仕切ってんだって、文句垂れてるんだよ、あの人は。
多恵叔母さんの気持ちも、芳樹叔父さんの願いも、あの人には、関係ないんだな…。
悪い、和樹。しばらく、そっちへは、行けそうにない。もうすぐ、千秋が戻って来るから、何かあったら、言ってくれ。」
「大変だね。」
「もう、なれたよ…。出来るだけ、揉めないように気を付けるけど…我慢出来るかな?」
俺は、苦笑いしながら、年老いた姉妹がいる部屋へ入っていった。
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