鉛色の空…

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「…今更、秋穂姉さんの話をして、私の心が、晴れると思っているの、彰。」 「思わないよ。…だけど、母さんを、悪く言われたくはないんだ。 祖父さんが、引き取ってくれた時、俺は、国枝の人間になるために、生きていくために、それまでの全部を置いてこなくちゃならなかった。 速水の名前だって、正式に、跡継ぎとしてのお披露目がされたら、国枝に変えられてしまう。 唯一、俺に許されていたのは、両親と暮らした10年ちょっとの記憶だけだ。 あの屋敷で、昔のことを知らない鈴音と綾と、殆ど3人で暮らしてるのと、変わらなかったんだぞ。どうやって、母さんのことを知れば良かったんだ? 今と違ってな、あの頃は、たまにしか顔見せないあんた達に、俺は、遠慮しか出来なかったし、あすこで、母さんが、どんな風に生活してたのかも、聞けなかった…。 なあ、教えてくれよ。頼むから…教えて下さい。」 頭を自分から下げた俺に、流石の美佳叔母さんも、仕方ないと、話す気になったのか…。 「…私は、悪口言うつもりはなかったのよ。元々、私は、姉さんに憧れていたのだもの。 多恵も知らない、私だけが知ってる、秋穂姉さんの真実…。私を裏切って、一人残して、出ていったのよ、あの夜、姉さんは…。 …忘れもしない。あの日も、今日みたいな雨の降る夜だったわ。 」
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