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「狙いが全くわからないけどな」
赤石もまたお手上げのようだ。言葉に力がなかった。
「イサコさんは大丈夫でしょうか?」
桃磨は明日の予定を考えきれずに呟いていた。
赤石の掌が桃磨の髪を弄る。
「ルールさえ守ればイサコは無事だよ」
「イサコさんが人質なんですか!」
赤石の掌が離れると桃磨は勢いだけで言い放つ。
「旅館全部が人質だ。無冠の流星からの指示で桃磨に伝えられないこともいくつかある」
「一体いくつの指示を出したんですか? そんなことをしても何もならないと思うのですが」
「桃磨。俺が何とかするよ。だから無冠の流星からの連絡が来たら教えてくれ」
赤石が静かに言った。真剣な赤石を桃磨は裏切ることができない。そこは頷くほかなかった。大人しく引いて明日の計画を練るしかない。時計はまだ夕方四時だ。夕飯にも遠い。桃磨は赤石に浴場へ行くことだけを告げて別れた。
しかし、桃磨の気は晴れない。止めどないもどかしさだけが溢れてくる。
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