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電車が秋保に停まった。
車内アナウンスで目覚めた赤石はやはりいそいそと旅行鞄を棚から下ろす。買った土産物の袋も自分で握り、颯爽と電車を降りてしまう。
桃磨は置いてきぼりを食らいながらも、赤石の後ろを急ぎ足で着いていく。
切符を駅員に渡した赤石がタクシー乗り場を聞いて更に足早に駅を出る。
これも普段とは違う。赤石はいつもならば桃磨を追い駆けるのだ。今は完全に桃磨が後ろを歩いていた。
「秋保旅館まで」
タクシーを見つけた赤石はトランクに荷物を乗せると桃磨を急かした。
桃磨も鞄をタクシーのトランクに詰め込み後部座席に座る。
タクシーが走り出して数分で町並みは変わり、左右に山が見えてきた。春の山は新緑が芽生えたばかりということもあり、薄い緑が広がっていた。また、山を背景に田園が広がる。農道をタクシーで更に進むと古風な老舗旅館は見えてきた。
タクシーは老舗旅館の入口に建てられた柱を横切り、駐車場に止まる。
赤石はタクシードライバーに賃金を払い、トランクから荷物を下ろしに先に降りた。
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