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桃磨は腑に落ちない。
タクシーから降りて荷物を持ち、老舗旅館「秋保旅館」を見据えた。
外見の秋保旅館は古い。しかし桧で作られた館内はとても居心地が良さそうであった。屋根は瓦だ。今時珍しい落ち着いた雰囲気が印象的であった。四階建て、隣にも小さな建物がある。出迎えた女将の話では百八十人が泊まれるという。こんな広い旅館に宿泊するのは何年ぶりだろう。桃磨は物珍しそうに旅館の内装を確認していた。荷物は旅館の従業員が運んでくれている。着物姿の中居さんだ。動きずらそうに見ていたが慣れているのか動きはスムーズで卒がない。
「こちらのお部屋になります」
中居が扉を開くと八畳一間の部屋があった。畳の中心にはお茶菓子を載せた机と座布団が用意されている。扉を開いて正面には川がと風景が見える大窓が取り付けられ、窓から入った陽射しが木目の美しいフローリングを照らしていた。雰囲気の良い部屋だ。
中居はこれからの日程を語り、深々と頭を下げて去って行く。
「風呂に行こう」
荷物も片付けずに赤石は部屋を出ようとする。
「待ってくださいよ」
桃磨は赤石の前に立ちはだかった。
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