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赤石は何も言わずに桃磨を見ただけだ。
「何を隠しているんですか?」
桃磨の切り込んだ質問に赤石は笑う。誰にでも分かる作り笑顔だ。
「無冠の流星がこの旅館に居るんですよね?」
桃磨は赤石に詰問を続ける。
「なあ、桃磨」
「なんですか?」
「事件の話は夜にしないか?」
「無冠の流星が事件を起こしてからでは遅いと思っているから聞いているんです。僕はあいつを捕まえる為に学校を休んで来ているんですから。そろそろ話してくれてもいいと思います」
桃磨は桃磨なりに必死に訴えたが、赤石は中居が用意した温泉セットを手に持ち変えただけだった。
「温泉が先だ。温泉が!」
「いや、ひとりでどうぞ。僕は部屋に居ますから」
桃磨は久しぶりに腹が立って道を譲る。
「桃磨も来い。もったいないだろう。無冠の流星に弄ばれるだけの宿泊なんて。考えただけでも吐き気がする」
答える赤石は何処までも遊んでいるようにしか見えない。これで三十半ばというのだから落ち着きがないとも言える。
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