序章

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「桃磨。それは言えない。だから難事件なんだ」 「無冠の流星に指示を出されていると思っていいんですね」  桃磨は直感を働かせる。 「俺は温泉に入る。桃磨、好きにしていいが危ないときは騒げよ」  赤石が混浴風呂に消えてから桃磨は深い溜め息を吐き出した。  事態は思う以上に深刻なようだ。  しかし、桃磨にはなんのヒントもない。ますます危険と隣り合わせなのだと理解した桃磨は休憩スペースを目指した。休憩スペースであれば人目に着く。部屋に閉じ籠るよりは気分も晴れる。大浴場を過ぎた先に休憩スペースが設けられ、ソファと机、自販機があった。風呂場を出た客が何人か冷たい水や珈琲を飲んで休んでいる。女性や家族連れ、老若男女問わず思い思いに時間を楽しんでいる。  桃磨は空いていたソファに腰掛けた。上からはエアコンの風が降る。湯冷めしないように適度に調節された風が休憩スペースを対流していた。  桃磨は携帯電話を取り出した。今流行りのスマホである。ピンク色のスマホは半年前に買ったものだ。頻繁に使う割りに大切に使っているので画面に傷ひとつない。
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