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見えなくていい箇所が見えてくる。ぼやけていた回りに神経が向いていく。自分は後回しで他人の行動や会話に集中していく。気が付かないだけで無冠の流星が近くに居る可能性を探す。その傍らでイサコにメールを打ち込む。
「桃磨。イサコにメールしても無駄だぞ」
風呂から上がってきた赤石に桃磨は無言でスマホを見せた。
スマホの画面には無冠の流星からのメッセージが浮かんでいる。
赤石が僅かに顔を歪めた。平静を装おう素振りもわざとらしい。
「――返信したのか?」
息を詰まらせるように赤石が訊ねてくる。
「いいえ。たぶん無駄です。赤石さん、説明してください。僕が風呂場に行った間に何を聞いたんですか?」
桃磨はすかさず詰め寄った。
「桃磨。場所変えようか」
赤石が苦笑い歩き出す。
赤石は人気の無い通路に出ると煙草が吸える場所を探す。
桃磨も探してはみたが禁煙スペースのようであった。
別館の二階通路を歩き始めて数分、煙草が吸える場所は見付からない。
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