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旅館は繁盛している。
団体客もチェックアウトをして帰るところだ。女将も支配人も慌ただしく客を送り出している。
赤石は、桃磨に届いたメールを思い出していた。
この旅館には悪意がばらまかれている。
悪意には殺意も入るのだろうか。そうだとすれば早めに解決してしまいたい案件であった。
「赤石様、封筒が届いておりました。お名前と差出人の確認と本人証明書をお願い致します」
受付嬢に言われて赤石は免許証を示し、五つの封筒を抱えた。差出人は書かれていないが名前は間違いなく自分宛であった。まさか同姓同名かとも思ったが、都合良く同姓同名を宿泊させることは難しいだろうとも考える。
「それと、部屋を予約した結城イサコがいきなりキャンセルすると言い出したんですが、もうキャンセルされてますか?」
赤石はずっと気にしていたことを確認する。
「結城様は昨日キャンセルの連絡を頂いております」
「ありがとうございます。わかりました」
赤石は礼を述べてラウンジに入った。
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