1章

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 ラウンジには椅子と机が用意されている。食べ物も注文できるような空間だった。カウンターの前に設置された大食堂のようなものだ。ジャズが流れている。落ち着いた雰囲気があった。  赤石は自由に席に座り、差出人の無い封筒を開いた。  中からは紙と冊子が出てくる。  冊子は事件の概要で紙には指示が書かれていた。 ――赤石探偵のことであるから私がフロントになにかを預けたことくらい直ぐに察しがついたと思います。概要は読めばわかります。ピンキーにはくれぐれも見せないようにお願いしますね?  腹のたつ文章に赤石はあからさまに煙草に火を点けて灰皿を引き寄せた。無冠の流星らしい挑発文であった。しかしながら挑発文に噛み付いても時間の無駄であることを赤石は良く知っている。今は概要を読みほどきたかった。なにせ時間は粛々と過ぎている。延長の利かないゲームだ。煙草を吸い終えた赤石は資料を開いて読むことに集中する。
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