1章

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 旅館を探検することにした赤石は、財布と携帯とメモ帳だけを鞄に入れて部屋を出た。  旅館は本館と別館がある。風呂場は渡り廊下を進んで別館にある。  大浴場はかなり広かった。サウナや水風呂、天然温泉の他に子供用の浅い風呂がある。今夜は小浴場に行くことにして、赤石は別館を歩き回る。  部屋数は平面図で確認できた。非常階段もきっちりと配備されている。非常灯、消火器、消火扉、スクリンプラーと一度火事で燃えた旅館だからこその確かな用意がされている。  平面図を見る限り単純な構造の別館で入り組んだ通路にはしていない。余程の方向音痴でもなければ迷うことはなさそうだった。  赤石は旅館の探索に没頭していった。  従業員の数もわかった。二十人程度だ。今日は三人が休んでいるという。情報はフロントから仕入れた。旅館を舞台にした小説を描くといえば快く応じてくれたのだ。その調子で赤石は取材として話を聞いた。もちろん、火事の話題も切り出すことに成功した。
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