1章

20/34

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
 しかし赤石には繋がらない。誰かと連絡中なのだと思って携帯を机に置いた。  小腹が減ったのでホットケーキを追加する。ふんわりしたホットケーキの写真は腹の虫を盛大に鳴らした。  メニューを戻し、窓辺から景色を眺めてみたがなにも変わらない。  通行人が行き交う仙台の街は平和だった。天気も悪くはない。新しい水族館ができたことは新聞で知った。明日はその杜の水族館に足を運ぶ予定を組んでいる。無冠の流星がなにを考えているか知れたものではなかったがふいに渡された長い休みを棒にするつもりはなかった。それこそ大人になってからでは味わえない長期休暇だ。受験に備えて机に向かっていた桃磨は不覚にも楽しみを覚えていた。  携帯が鳴った。  桃磨は慌て携帯を取る。 「桃磨?」 「赤石さん、なにか進展があったんですか?」  桃磨は喫茶店だと言うことを忘れて声音を張った。  客やウェイターの視線を感じて表に出る。 「いや、まあ。なにをしていたのかと思ってな。イサコも心配していたから」
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加