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車が流れていく。桃磨の携帯が振動した。電話はイサコからであった。
「もしもし?」
「あ、さっき出れなくてごめんね。何か用事?」
イサコのあっけらかんとした口振りに桃磨は拍子抜けした。
「いえいえ。忙しいところすみません。いま大丈夫ですか?」
「大丈夫だから連絡したのよ。今、何しているの?」
「仙台の町を歩いています。ポプラを見たかったのですがもう少し歩かないといけないようです」
「ポプラ? 新しくできた水族館を観に行ったんじゃないの?」
桃磨はイサコの言葉に眉を潜めた。
「僕は水族館には明日行く予定です。どなたから聞いたのですか?」
「どなた……って。赤石さんからよ?」
「おかしいです。書き置きしてきましたよ?」
「え、じゃあなんで水族館に行ったなんて?」
「わかりません。電話で直接聞いたのですか?」
「朝は時間がなかったからメールにしたんだけど」
「赤石さん。かなり神経質になってますね」
「え?」
「無冠の流星が探りを入れてきたのだと勘違いしたのではないでしょうか?」
「それって無冠の流星が私に成り済ましたと言いたいの?」
「はい。可能性を疑ったのだと思います」
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