1章

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「ただいまです。お土産です」 「ああ、サンキュ」  赤石が紙袋を受け取った。 「変わりはないようですね」 「ないんだな。これが」  赤石が肩を竦めた。風呂上がりなのか浴衣であった。 「盗聴もなし、ハッキングもなし。動き、なし」 「連絡も誘導も?」 「ない」 「気味悪いですね」 「気味悪いを通りこして悲しくなるね。今までの手口とは違うんだな」 「遊びに巻き込まれた僕たちはただの駒ですからね」 「ほかに駒があるとしたら?」 「推理せずにそこに到達するのは無理な話です」  桃磨はタオルケットを戻して上着を衣紋掛けに片付ける。 「だよな。俺は桃磨に情報を渡していない。それで関係者を割り出されたら驚きだ」 「そうですよ。情報はおろかまったく考えていないので御手上げなんですよ」  桃磨は布団に座り込んだ。 「チェスにするか? 将棋にするか?」 「将棋にしましょう。青葉城を見ていたら武将のことを考えたくなりました」 「本当か?」  赤石がバックから将棋板を抜き出した。
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