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「考えてみたら歴史を真面目に考えることなんてなかったなと思いました」
「俺も興味はないな。歴史というと暗記というイメージが強かった。今は警視庁の歴史とかさっくり忘れたよ」
駒を並べ始めた桃磨と向かい合い、赤石が座る。
「桜田門ですよね」
「そうそう。警察の桜バッジはそこから来ているんだよな」
「格好いいですよね」
「すぐ落とすんだよ。乱闘で。榎木警部が泣きそうになって探してた」
すべての駒を並び終えて赤石が後手に回る。
「イサコさんから連絡をもらいました。お土産の話をして終わってしまって部署のようすを聞くことができませんでした。榎木警部は元気でしょうか」
桃磨は歩を進めた。香車のふたつ前にある歩だ。
「俺も聞いていないな。辞めてから連絡もしていないよ」
赤石は板を見詰めて呟いた。
「お風呂行ってきます」
「いってらっしゃい」
桃磨は考え始めた赤石を残して部屋を出た。赤石も考え始めると桃磨以上に長い。たまに勘違いをすることもあるが本一冊読み終えてしまう。
廊下は生ぬるかった。春だ。桃磨はそう思った。
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