2章

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 事件の間、繰り返される事態にイサコが翻弄されていた。  いつだってあの二人は事件の最中に居る。  イサコは携帯画面の未読メールを開いた。  仕事のメールばかりが目立つ。  無冠の流星のこともあって気が散って仕方がなかった。  無冠の流星とは一度だけ出会ったきりだ。意外に軽い口振りの飄々とした精神科医であった。名前も覚えてはいない。無冠の流星という通り名が印象に残りすぎている。警察が似顔絵と本人画像を公開しているにも関わらず、無冠の流星の足取りは掴めていない。有力な情報は一件で、本人からのいたずらメールというから捜査員の腸は煮え繰り返っていた。  赤石が辞めてから立ち上げられた無冠の流星追跡班にイサコも混ざりたかった。赤石を呼び戻す話も出たが桃磨の身の安全を考えて話は流れている。イサコが無冠の流星追跡班に入れないのも警視庁官からの指示だった。無冠の流星の大胆不敵な挑発があったのだ。イサコは無冠の流星に狙われている。  イサコは赤石にも桃磨にも伝えていない。しかし結果的に良かったと感じている。殺人課から強行対策本部への異動にイサコはどこかで安らぎを覚えていた。
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