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「さあ、秋保に行くぞ」
車を降りた赤石が張り切る。積んできた荷物をトランクから引きずり出す様子は今までにないくらい楽しそうだった。
「無冠の流星が秋保に居るんですか?」
桃磨もポーチを腰に巻き付けて自分の荷物を持ち上げる。
「イサコから聞いた情報が正しければな?」
「確定では無いのですか?」
「まあ、そんな話は旅館に着いてからでもできる。ほら、電車の時間があるんだ。急げ!」
赤石が旅行鞄を持ち上げて駐車場を歩き始めた。
桃磨は赤石を追いかけながら不審感を募らせる。
赤石の動向がいつもとまったく違うのだ。
桃磨の違和感が消えないまま、秋保行きの電車が止まるホームに辿り着く。
赤石は楽しそうに時間を確かめて、土産物を購入する。
桃磨は赤石がはしゃいでいるようにしか見えなかった。
電車に乗ってからも肝心の事件を口にしない赤石に桃磨は痺れを切らして問い掛ける。しかし、赤石は惚けるだけでしまいには眠ってしまったのだ。
「あんまりだ」
桃磨は電車の中で呟いた。
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