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嘘
「おーい中島!お前、橋本と付き合ってるだろ。」
それはまたしても突然だった。
「…なんでだよ。」
「しらばっくれても無駄だぜー。お前と橋本が視聴覚室でいちゃこいてるの、見たんだからさ。」
同じクラスの田中は、噂好きの曲者。
わざと大声で言っている辺り、厄介さは本物だ。
「えー!?さくらが中島くんと!?」
「だから最近昼休み居なかったの?」
女子もどよめき出す始末。
「中島さー、誰もが羨む美少女の次は、ずいぶん身近に目を付けたなー!身の程を知ったか?」
田中の嫌味な笑いが鼻につく。
そういやこいつ、茜に二度フられたらしい。その腹いせか…?
俺と付き合ってる時にも告白したらしいから、筋金入りのチャレンジャーだ。
「田中くん、ごめんなさいね。あなたが目を付けられる程の顔面じゃなくって。ごく平凡で。本当にごめんなさい。期待はずれだったかしら。」
田中がハッとして振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた橋本さくらがいた。
そして、睨みつける女子軍団…
「ちょっと田中ぁー。今の言葉聞き捨てならないんだけど。」
「中島くんが身の程を知ったって、それ、どういう意味よ?」
「まずはあんたが身の程を知った方がいいんじゃない?」
「あ、いや、今のは言葉の綾と言うか…例えというか…間違ったというか…」
たじたじな田中。いい気味だ。
「田中くん…私や中島くんが誰と付き合っていようが、あなたには関係のない話じゃないかな?
それをネタに注目浴びて…嬉しいのかな?
それとも、中島くんへの劣等感は、これで克服できたのかな?
ん?」
橋本さくら…
見かけによらず、迫力のある奴だ。
「……悪かったよ。橋本。」
女子軍団に責められ、すっかり小さくなった田中。
…少し同情するぞ、田中。
「…で、実際どうなのよ、さくら。」
今度は橋本に多くの視線が注がれる。
「んー…バレたなら仕方ないか。これでクラス公認で、くっつけるようになるかな?」
俺の肩に巻きつく橋本。
クラスが女子の歓喜に包まれた。
…なんじゃこら。
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