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ケ、ケ、ケ、ケ、ケ
キィッ、キィッ
オォォォ、オォォォ……
これもまた夢だろうか。
最近夢見が悪すぎる。
ストレスかしらん、うん、ストレスに違いない。
閉じた瞼の内は一面山吹色、何者の姿も見えぬその中で、不気味な生物の鳴き声だけが、方々にこだましている。
此方に越してきてから、たまにみる夢。
全ての演者が声のみの出演だなんて、奇ッ怪な。
ギャゥッ!!
ヒトの悲鳴によく似た音がし、横になったままの自分の体がビクリと跳ねたのが分かった。
あぁ、心臓に悪い。
目が覚めたとき拍動が止まっていたら、どうしてくれるんだ。
冗談、笑えない。
夢の中でひとりごち、ふと、もしそうなったら、かの人は自分のことをちょっとでも心配してくれるだろうか、と考えた。
脳髄にひたと染みるあの深い声で、名前を呼んでくれるだろうか。
例え今は、心が通い合っていなくとも。
だけど、例えそうなったとして、どうか悲しい顔をしないでほしい、微笑みかけてほしいと思う。
なぜなら自分は、かの人の笑顔が大好きだから。
その幸せを、何よりも誰よりも、心から願っているから。
ケ、ケ、ケ、ケ、ケ
ホーゥ、ホーゥ…
閑話休題。
はてさて、これらは一体、何の鳴き声なんだろう。
イヌ、ニワトリ、オオカミ、フクロウ。
それとも一ツ目のキツネ?髪が蛇の小坊主?
山吹色の中央ら辺を見つめながら、絶え間なく飛び交う声の正体をツラツラと考えていると、じわじわ体が重たくなってきた。
それにしても、ちょっと前までは一度寝たら中々起きない、夢すらみないことで有名だったのに、年をとったものだ。
早いもので、年末には十九になる。
瞼の内の山吹色が翳り、徐々に黒灰色の靄にとって変わる。
続く鳴き声は少しずつ遠退き、意識は再び、深い眠りの沼の中に沈んでいった。
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