誘われるがまま

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
あの女は予告通り教室に居た。 まるで、俺が来るのがドアを透かして見えていたかのような、全部知っていたかのような、そんな悠然さを漂わせていた。 「あらあら、誰かと思えば誰ですか?」 「ふざけるな、あんたが呼んだんだろうが」 俺はそんな女の余裕さに若干気圧されながらも、威勢をはる。 「ああ、昨日の方ですか。 そんな格好をしているから、私の知り合いかと思いました。 よく似ていますよ。 死んだあなたのお兄さんに」 女の悪意を含んだ笑みに、俺はいらだちと、恐れを抱いた。抱かされた。 「俺に何をさせるつもりだ。お前の目的はなんだ」 「昨日伝えた通りですよ。 それではいきましょうか。 あなたのお兄さんの死の真相、知りたいですよね?」 女は最大級の嫌な笑みを見せながら言った。 俺はただ誘われるように、女のあとについて、静寂な教室をあとにした。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!