111人が本棚に入れています
本棚に追加
「黒川さんッッ!!」
アサ子が走り寄ると、黒川はふっと緊張を解いたかのように横に倒れ、地面に落ちた。
のっそりと体を起こしたハイタカは自分が取ってしまった行動をようやく実感したのか、放心した様子で黒川を見下ろしている。
そのとき「ここに居たのか!」と声がして、息をきらしたハヤブサが木々の陰から現れた。ヘルメットを装着していない頭からは大粒の汗が滴っている。
――特殊部隊の隊長……。
アサ子は一瞬、逃げなくちゃ、と思い出した。
彼らに捕まれば、強制的にヘリに連行されると思った。しかし、黒川の苦悶した表情が目に移ると、その場に縫いつけられてしまったかのように足が動かなくなった。
「ハヤブサ!!」
ハヤブサは黒川の姿を見つけると、血相を変えて叫んだ。
「ハヤブサは……お前……だろ……」
途切れ途切れに声を振り絞った黒川は少し笑ったが、その顔は真っ青だった。
最初のコメントを投稿しよう!