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「え……、4番も……?」
ハイタカは怪訝な顔をした。
負傷した死刑囚を帰還させた前例がないからである。
「4番は死刑囚じゃないんだよ! 立ち止まってないで急げ!!」
「は、はい!!」
怒鳴られたハイタカは考えるよりも先ず駆け出したが、そのときになってようやくハヤブサが黒川を『ハヤブサ』と呼んでいたことを思い出した。
――4番がハヤブサ……?
一層、謎が募るばかりだった。
***
「黒川さんは助かりますか」
アサ子はハヤブサに訊いた。
彼なら応急処置を心得ていると思い、助手の位置に立つつもりだったのだが、ハヤブサは何もしようとしなかった。
確か、体内を循環する血液量が急激に失われ、臓器の循環が障害されると、適切な救急治療が行わなければ、意識障害、呼吸障害と進み、生命に危険を及ぼす状態となるため、刺さった刃物は抜かない方がいいと聞いたことがある。
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