第16話

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「いいか、よく聞け……。妊娠してる場合、刑は執行できねぇ。進藤 礼二が……捕まるまで……妊娠の……可能性がある……と引き延ばせ……」 アサ子は何度も頷いた。 黒川がそれを話すことに、全力を注いでいるのだと感じたからだ。息も絶え絶えに、それを伝えてくれる黒川の優しさを受け止めると、胸から熱い何かが溢れた。 「わかった。私は頑張るから、黒川さんも気をしっかり持って!! こんなことで死んだりしないでしょ? お願いだから生きて!!」 「俺ぁ……疲れた……。寝かせ……てくれ……」 黒川はアサ子を見ずに目を閉じた。 ぜんまいが切れた人形のように、カクンと頭を横に向けると、ぴくりとも動かなくなった。 強く手を握りしめると、やけに冷え冷えとした生気の無さが伝わってきた。 「ウ……ソ……。嘘でしょ? 黒川さん起きて! 嫌よ、死なないで! 黒川さんッッ!!」 黒川は返事をしなかった。 一部始終を見ていたハヤブサはアサ子の肩を優しく掴むと、止せと言わんばかりに首を振った。
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