道標

5/21
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
翌日、リビングに向かうと、いつもは既に出社しているはずの父親が、食卓に座り、コーヒーを飲んでいた。 「今日は営業先に直行する予定なんだ。ちょうど祐未の試験会場の辺りを通るから、一緒に乗って行くか?」 「え、いいの?」 父親の提案に、パッと表情が明るくなる。試験会場に車で送ってくれるのであれば、少し時間に余裕が出来る。もう一度、気になる問題だけ、見直しができる……そう考えていた所で、ふと頭の中に昨夜のメールが浮かんできた。   『××ドオリ スリップ ジュウタイ』 「___雪、昨日の夜も降ってたよね?積もってるかな?」 「さっき、郵便受け覗きに行ったら、家の前の道路、アイスバーンになってたな。なぁに、スタットレスにしてあるから、心配はないよ。それに、今日は晴れるみたいだから、日中には溶けるんじゃないか?」 「そっか。お父さん、もし車で送ってくれるのだとしたら、××通りって通るの?」 「そうだけど、それがどうした?」 いや、昨日のメールはきっと私の目の錯覚で……でも、何でこんなに心に引っ掛かるんだろう? 「ありがとう。でも、やっぱり電車で行くよ。駅で友達と待ち合わせしてるから」 嘘を吐いてしまった。「そうか」と父親は頷き、「試験、頑張れよ」と照れ臭そうに視線を寄越した。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!