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翌日、リビングに向かうと、いつもは既に出社しているはずの父親が、食卓に座り、コーヒーを飲んでいた。
「今日は営業先に直行する予定なんだ。ちょうど祐未の試験会場の辺りを通るから、一緒に乗って行くか?」
「え、いいの?」
父親の提案に、パッと表情が明るくなる。試験会場に車で送ってくれるのであれば、少し時間に余裕が出来る。もう一度、気になる問題だけ、見直しができる……そう考えていた所で、ふと頭の中に昨夜のメールが浮かんできた。
『××ドオリ スリップ ジュウタイ』
「___雪、昨日の夜も降ってたよね?積もってるかな?」
「さっき、郵便受け覗きに行ったら、家の前の道路、アイスバーンになってたな。なぁに、スタットレスにしてあるから、心配はないよ。それに、今日は晴れるみたいだから、日中には溶けるんじゃないか?」
「そっか。お父さん、もし車で送ってくれるのだとしたら、××通りって通るの?」
「そうだけど、それがどうした?」
いや、昨日のメールはきっと私の目の錯覚で……でも、何でこんなに心に引っ掛かるんだろう?
「ありがとう。でも、やっぱり電車で行くよ。駅で友達と待ち合わせしてるから」
嘘を吐いてしまった。「そうか」と父親は頷き、「試験、頑張れよ」と照れ臭そうに視線を寄越した。
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