第1章 ゆいいつの、ささえだった

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おかしいぞ、わたし。 と本格的に思い始めたのは、九月真ん中。 八月に、最愛の黒猫の蓮が難病にかかって発症から二週間で逝ったときから始まっていた。 蓮は優しい子だった。 その日はいつものように、肺に溜まったリンパ液を抜くために病院に行った。 いつもと違ったのは、いつもはおとなしく病院に行くのにその日は猛烈にいやがった。でも、無理矢理つれていった。 今日もがんばっているから出先で大好きなおやつと新品の爪研ぎと猫草を買った。 その出先で、訃報を聞いた。しばらく踞って動けなかった。 急いで家に帰ると、段ボールに入った蓮がいた。 動かなくて、固くなってて、ひかえめなかわいい鳴き声が、かわいい声が聞こえなくて。 遺体にすがって泣き叫んだ。祖父母が死んでもそんなに泣かなかったのに。 狂いそうだった。 そのふっくらとした体を撫でても、いつもみたいに嬉しそうな顔もしない。 起きて遊ぼう、爪研ぎ買ってきたよ。サラダ大好きだよね、食べようよ?とずーっと言っていた。 もう蓮の体が完全に固くなっていた。 起きて、まだ早いよ。おねえちゃん、まだいたいよ。ずーっと、体を撫でていた。
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