第1章 ゆいいつの、ささえだった

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あれほど愛した子もいなかった。 死んだとき、狂いそうになった子はあとにも先にもあの子だけだった。 頬にキスをすると、うっとりと目を閉じる子だった。人を信頼する子で、食いしん坊で、お座りとちょうだいができた子だった。 顔はぶさいくだったけど、こんなに愛しいと思った子はいなかった。 この子はわたしの腹は通ってないけど、種類も違うけれど、わたしの子供なんだと強く思った。 愛してる子を亡くして、大袈裟だとあきれられた。たかだか猫一匹。 その一匹の死が、発症の引き金だった。 蓮だけがささえだった。 蓮だけが癒してくれた。 愛していた。 子供だったんだ。 本当に、本当にわたしの子供だって思ってた。
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