勇者と

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「その表情から察するに、今外のあの子をどうやって助けようか必死に模索してみたいだね。 まぁ無駄だけどね。 『光集いて刃を形成し、我が道に横たわりし邪を一撃の元に滅せ。 魔を打ち払い、法に囚われることの無い剣戟は我が王道の象徴。 顕現せよ、魔断光剣!!』」 どこからともなく現れた光が詠唱が進むにつれ、どんどん聖剣を包み込む。 詠唱が終わり剣を天高く構えた時、光が一気に弾け淡い金色の刀身が顕現していた。 『聖魔法 極級 天地開闢せし光剣』 その長さは元である聖剣の実に5倍はあり、天井を突き抜けている。 刀身の素材が光であるため重量は見た目に反比例して非常に軽く、聖剣を扱う感覚で馬鹿でかい剣を振り回せることができる。さらに元である聖剣同様、「魔法を斬る」ことができる。 たかが光だと侮ることなかれ。 重さはないが、驚異的なのは金剛石をバターの如く切り払うその切れ味。出鱈目とも言えるこの剣の前では如何なる防御も魔法も全てが無いも同然。 正に「勇者」に相応しい反則的なまでの能力を持った剣である。 「痛みを感じる暇もなく、この世から消してあげるよ」 そう宣言すると、両手持ちに切り替えマキ、ネヴリナを家ごと斬らんとする横薙ぎの一閃。 光の刃はレンガの壁を裂いていき、立ち竦むマキのほんの数m横にまで迫る。 「…殺させん。 殺させんぞォオォォォオ!!!」 凄まじい声量と共にネヴリナが刃とマキとの間の空間に身を滑り込ませ、剣の腹を肘と膝で挟み込む荒業をやってのける。 どうやら光全体に切断する機能があるわけではなく、普通の剣と変わらず刃の部分でしか切断できないようで、挟むネヴリナの肘などは依然として無傷。 止めるネヴリナごと斬りたいミツルの膂力と、如何なる方法でもここで止めたいネヴリナの片足の踏ん張りが拮抗する。 だがしかし、拮抗したのは一瞬。 両の足で踏み込み全体重を剣に乗せるミツルと、片足でそれを止めるネヴリナでは力の差は歴然。押され始めているのだ。
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