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とある辺境の村
年々人口は減少傾向にあり、さらに国最東端の村ということもあり、常に閑散としたどこか廃村めいた雰囲気を漂わせるこの村。
村に点在する家屋のうち、3軒に1軒の割合で空き家なのである。
最盛期である70年前には1000人いた村人も、今では100人足らずとなってしまった。
豊かな暮らしを求める家族は家族ごと王都へ、畑仕事では家族を養えないと悟った男手は皆、稼ぎを求めてこれまた王都にこぞって流れていった。
70年前にはバリバリで農作業携わっていた若者も、今では半数が老齢で亡くなり、もう半数も現役の時とは比べ物にならないくらいに衰え、老い、満足に動けない。
ほとんどの男が王都へと行ってしまったこの村には、老人や残された家族しかいなくなってしまった。
一般の人から見れば、村の存在すら記憶にあるか怪しいほどこれと言った特産物もなければ観光名所もない。
しかしながら賊たちから見れば、自衛力も低く、知名度もない。
おまけに老人と街に出稼ぎに行った夫を持つ妻や子供がほとんどの村は格好の獲物であった。
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というのはつい先程までの話。
毎月恒例である賊の略奪。
今日も村から金品、食料などを意気揚々と略奪しに来た賊たちは数十分後には皆一様にして地面に伏し呻いていた。
「なん…なんだ、お…前……は…」
「50人を…たっ…た、1人に……」
「……しかも、餓鬼に」
口から出る言葉は自分たちを負かした相手に対する畏怖や、驚愕の色が色濃く孕んでいた。
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今日、彼らがこうも簡単に伸されたのには二つばかりの想定外があったからだ
一つ目の想定外。
定期的な略奪により、村がギルドに対して報酬を払うことの出来るほど金を持ち合わせていないと思い込んでいた。
ところがどっこい、村民が上手く金を目につかないように隠していたらしく、まんまとギルドに依頼をされてしまった。
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