前日譚

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「彼」は飢えていた。 雲一つない果てまで広がる澄み渡る青空。 拳大の石が無造作に転がり、背の低い枯れ木が点在するだけの荒野地帯。 真夏の真昼の太陽が何者にも遮られず、容赦なく地上を焼く。 カラッカラに乾燥した空気は風が吹くと熱風となり、40℃近くある太陽からの直射日光が刺すように皮膚を焼くのである。 陰と言える陰は見渡す限り見つからず、ジリジリと少しずつ奪われていく体力。 ここ二日ほどまともに食事にありつけていないことが体力の減少に更なる拍車を掛ける。 この場所に餌がないとわかれば、15mにも上る巨体を揺らし餌を求め荒野を再びさ迷い歩き始めるのである。
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