前日譚

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それから二日後。 所変わって背の低い草が生い茂るだけの大地が地平線の果てまで続く。 二日前とは違い、太陽は厚い雲の裏に隠れ日が地上に漏れることはなかった。 代わりにというべきか大粒の雨が地面に激しく打ち付ける。 だが暑さよりもむしろ彼はこの雨が非常に嫌いであった。 雨によってぬかるんだ地面からは獲物の匂いがかき消され、追う手立てを失う。 鼻がよく利く身としてはこのタイミングでの雨には殺意以外に持つべき感情がないくらいだ。 ──────────────────── 嫌いな雨、餌という餌に巡り会えない、こういった苛立ちが空腹に勝り始めた頃。 ガサガサっと大きめの物音。 その音につられてその方向に目を遣る。 茂みから顔をのぞかせたのは顔面に雄々しくそびえる三本の角。 それから頭部、胴体、尾と続いて姿を見せる。 群れを形成しているようで一匹、また一匹と茂みから続々と出てくる。中には子供の姿も見え、ここ最近なかった「運」がようやく巡ってきた。 ぼやぼやしていると、こちらの存在に気がついたようで雄たちが威嚇、雌たちが子供を優先的に逃がそうとしている。
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