前日譚

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みるみるうちに数頭の雄を先頭にした雌や子供の集団が遠ざかっていく。 『■■■■■■■■■■■■■■!!!』 自分の行く手を阻む雄共に、空腹がゆえの苛立ちがついに彼を吠えさせた。 吠え声が大気を震わせ、物理的な威圧感へと変わりバリケードを形成する雄たちの緊張が一気に高まる。 一触即発の空気の中、一頭の三本角が他の雄を押しのけて彼の真正面に立ちはだかった。 フリル、胴体におびただしい数の傷。 怒号をものともしないその精神力。 さらに注目すべきは一本の半ばから折られた角。 ちょっとやそっとのことじゃ折れることのなかったあの角が、と過去に何度も三本角と対峙してきた彼だからこそ持てる感想。 『●●●●●●●●●●●!!』 そんな彼をよそに、歴戦の二本角は鼻息を荒くし力強く吠える。 『■■■■■■■■■■■■■■!!!』 それに応えるように彼も再び吠える。 肉など容易く咬み切る歯が規則正しく並ぶ口を最大にまで開き、捕食者としてより強く、より恐ろしく見せる。
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