勇者と

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二つ目の想定外。 たった1人を相手に敗北を喫したこと。 ランクSまでのギルド員が3人程度であれば数の暴力でこちらも相当な被害を受けるが、仕留めることは出来た。 ただ彼らを待ち受けていたのは予想外すぎる人物であった。 ──────────────────── 賊とてこの国の民。 一年ほど前、「勇者召喚」が行われ、異世界から強大な力を持った青年が召喚されたことくらいは風の噂で聞いたことがある。 「黒髪に黒い瞳」 「道行く女性が100人いれば、120人が振り返る整った顔立ち」 「隠そうともしない圧倒的魔力」 「腰に下げた、国宝である『聖剣』」 一年経った今でも街では彼が話の種である。 ──────────────────── 知らず知らずのうちに、勇者の身体的特徴を覚えてしまったある賊の1人は、自分たちを待ち構えていたギルド員を見るや否や、「…嘘だろ」と言ってその場にへたり込んだ。 佇むのは『黒髪に黒い瞳』の『整った顔立ち』をした男。 その体から『溢れ出る魔力』からはこの時点で力の差を確信させられる。 最も目を惹くのは、手にした両刃の剣。 名を『聖剣リベルタ』。 刀匠ビルバオ・ダブリスが生涯を掛けて鍛え上げた一振りである。 全てが一致しているのだ。 聞いた話と目の前の男の特徴が。 「な、な、なんで!? なんで『勇者』がここにいるんだよぉぉ!!」 恐らくこれが最も彼らにとっても想定外であり、依頼した村人もまた想定外だっただろう。
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