勇者と

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全員、水を大量に飲んだことによって意識を失っているものの、誰一人として命を落とすことはなかった。 「やりやがったな……」 「勇者だかなんだか知らないが、構うことはない、殺るぞ」 「奴を殺した奴に聖剣はくれてやるよ」 「「「その話、乗った」」」 先ほどの戦い…というより一方的な拷問を見ていなかったのか、と問いたくなるほど単純な人たちらしい。 彼らの頭の中では、格が違いすぎる相手の勇者を殺せる算段があるようだ。 「全員、散開!」 「「「応!!!」」」 号令とともに左右に展開。 そのままミツルを中心とした円を形成するように人が並ぶ。 「撃てェェェェ!!!」 「「『フレイム・ガンショット』!!!」」 「「『アクア・ガンショット』!!!」」 「「『ボルト・ガンショット』!!!」」 「「『ウインド・ガンショット』!!!」」 「「『グラベル・ガンショット』!!!」」 「「『ライト・ガンショット』!!!」」 「「『ダーク・ガンショット』!!!」」 どうやら配置に着く道中で詠唱していたようらしく、「撃て」の合図で様々な属性を纏った魔法が散弾となり、ミツルのいる中心へと殺到。 けたたましい音がしばらくの間続き、それも次第に弱まり、やがて村に静寂が再び訪れた。 中心は大きく抉れ、地面が煙を吹いている。 ミツルの姿はそこにはなく「殺った」と確信する者が二割、「この程度で本当に殺れたのか?」と疑問を持つ者が八割。 「いやー、驚いた。 あの数は流石に焦るよ」 空から優雅な着地を経てミツルが現れた。 スボンの裾についた土埃を払いながら喋るその様子に、焦るとは言いながらも何の危機感も感じられなかったように見える。
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