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「ど、どうやって!?」
「え?跳んだだけだよ。
ほら証拠はあの地面の抉れ」
「あ、あれは俺達の魔法がやったやつだろ!?」
「抉れを大きくしたのはね?
元々の抉れを作ったのは僕だよ?」
ミツルの魔力や魔法にばかり目が行きがちなのだが、身体能力に目をやると人間を辞めているのではないかとすら思えるスペックを素で保有している。
今回の地面を抉った脚力も然り。
身体強化の類の魔法は一切使用せずにこれだ。
一通り土埃を払い終え、賊の方へ視線を移す。
「お喋りもこのくらいにしない?
そろそろ仕事を終わらせたいんだけど」
顔は笑っている。
しかし、彼らを見る目は完全に足元に落ちたゴミを見るかのような視線であり、一言一言に今まで感じなかった圧力が込められていた。
視線と言葉に怖気付く賊を横目に深く息を吸い込み吐き出す。それを数回繰り返した。
その後、脱力して垂直ジャンプを数回行い、足が地面についたと思ったらミツルの姿が消えた。
「ガッ…!?」
「ウッ…???」
「アッ…ガッ!!」
次々と倒れていく賊たち。
ある者は腹を抑え、ある者は糸が切れたかのように崩れ落ち、ある者は真横に吹き飛ばされる。
常人から見ればこの異様な光景こそ魔法でやっているかのように見えるが、ミツルからしてみればただ速く走り、鳩尾を殴り、手刀で首筋を叩き気絶させ、横腹を回し蹴りで蹴り飛ばしているだけで、徒手空拳の延長線。
特別何かしている訳ではない。
みるみるうちに戦闘姿勢をとっていた賊たちが倒れ伏し、結局誰一人として立っていることはなかった。
そして最初の光景に戻る。
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