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賊の一人から本拠地を聞き出し、留守を任されていた賊たちもものの数分で伸され、全員仲良く本拠地でお縄についた。
身動きを取れないよう、麻縄で手足を縛り上げるミツルに対して一人がこんなことを言い始めた。
「勇者さんよぉ、おかしいと思わねぇか?」
「おかしい?何がだい?」
話に耳を傾けるも作業する手は止めない。
「この村がだよ。
『どうして四年もの間、誰一人として里帰りはおろか、人一人としてこの村に寄り付かなかったのか』
それが俺達にはありがたい事だったんだが、よくよく考えるとおかしくないか?」
「……観光客はともかく、四年もの間出稼ぎに出ている人が帰ってこない事は確かに不思議だね。
でもこの村独特の風習かもしれないし、それを一概におかしいとは言えないね」
少しばかり引っかかるものはあったが、村人からしてみれば立ち入って欲しくない事かもしれないので、深く考えることはしなかった。
が、気になったので記憶している範囲でこの村の名前を見たことがあるかどうか思い出してみることにした。
するとどうだろう、思い出したのだ。
「……でも待てよ。
この依頼、前にもギルドで見たことがある気がする…」
「え!?どういうことだよ!!」
「なんだなんだ?」
「どうしたんだよ?」
「この村からの依頼、今回が初めてじゃなかったみたいだぜ」
「嘘だろ!?じゃあなんで誰も来なかったんだよ?」
疑問にざわつく賊たち。
それはミツルにも同じことが言えた。
必死に自分の記憶を洗い、些細な事でもいいから思い出そうとしていた。
この村に来るまで、何かおかしかったところはないかそんなことまで思い出していた。
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