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二十歳の僕が、
私のように平凡で最高に倖せな還暦を
迎えられることを願っています。”
読み終わった僕はコートを羽織ると靴を履き、
外に出た。
銀行に行ってお金を下ろし、
コンビニで履歴書と就職情報誌を買う。
その足で紳士服店に行き、
さらにスーツ一式を買った。
帰りかけてショーウィンドーに映る
ぼさぼさあたまの自分に笑いが漏れた。
近くにあった床屋に入り、髪を切る。
帰ると買ってきた就職情報誌を読み漁り、
履歴書を書いた。
……僕の中でなにが変わったのかはわからない。
でも、あの四十年後、
還暦を迎えた僕はなんだかとても倖せそうで。
……平凡も悪くないかも。
僕にそう思わせた。
大学中退からの就職は難しく、
それでもどうにか小さな会社の営業に採用された。
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