遠きｶﾅﾀより導かれて～鳳凰編：３～

第4章～立ちはだかる妖魔の無双の者～

家久が、移香斎を伴い本陣より出ていった後、忠棟が口を開き。
「まことによろしかったので家久様は副将で島津家には無くてはならない存在。家久様にもしもの事があったら？」
と、忠棟は不安な表情で義弘に問いかけ、この忠棟の問いかけに義弘は。
「確かに忠棟の申す事には一理ある。だが家久に見抜けぬならば誰を出しても同じ事。それに家久ならば抜かる事はなかろう」
と、忠棟の懸念を一蹴した。

すると、宗茂が口を開き。
「確かに家久殿が見抜けぬ事をこの場にいる誰が見抜く事はできないでしょうな…」
と、宗茂が納得顔で頷き、隣にいた利勝も頷き、宗茂と同意見であるという顔をしていて、そうなると、忠棟も反論する事はなかった。

だが、この時の義弘たちには、新たな化身である、鳳凰神の化身の強さが、強力な事を想像できなかったのである。

中海に境水道から侵入した、尼子水軍の軍船団は、安来へと進路をとり、そして上陸部隊の先陣である酒井忠次隊3000、真田信繁隊1000と横山喜内隊1000の八極拳部隊、これら合わせた5000が、安来へ次々と上陸、陣地取りに酒井隊が、真田・横山両八極拳部隊が、第2陣が上陸するまでの間、周辺監視と酒井隊の援護にあたった。

そして、第2陣の渡部源右衛門隊2000と延沢満延隊2000の八極拳部隊と、花房正幸隊4000を合わせた8000が、安来へ上陸すると、周辺監視と援護は、花房隊と渡部・延沢両八極拳部隊と入れ替わり、真田・横山両八極拳部隊は、酒井隊と共に陣地取りと確保にあたった。

尼子軍の先陣部隊の陣地取りが順調にすすむ中、飯梨川の上流の方から土煙が見え、人馬の駆ける音が地鳴りとなって、辺りに響き渡り、島津軍の旗幟が見えはじめたのである。

「来たな…」
その光景を目にした正幸は、そう呟くと更に。
「源右衛門殿と満延殿に迎撃態勢をとり島津軍を迎え撃つ様に伝えよ」
と、正幸は続け、渡部・延沢両八極拳部隊に伝令をかけさせた。

正幸からの伝令を受けた源右衛門と満延は、率いる八極拳部隊の将兵たちに、飯梨川東岸への布陣を下知、そして渡部・延沢両八極拳部隊が、飯梨川の東岸に移動、渡部隊が左翼に布陣し、延沢隊が右翼に布陣して、島津軍が飯梨川を渡って来たところを迎撃する態勢をとった。