第4章~立ちはだかる妖魔の無双の者~

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一方、島津家久本陣では、崩れる稲富・山田両前衛部隊の光景が見え、飯梨川を渡る尼子軍の後続部隊が、左翼と右翼へと転回して、こちらに向かって来るのが見え、そこへ移香斎を担ぎ数名の将兵が、家久に戦況を伝えた。 家久は担ぎ込まれた移香斎を見据え。 「移香斎殿が一撃でやられたとは…」 そう言いながら家久は更に。 「ここれはいかんな…」 そう呟いた家久は思う。 (移香斎殿が倒された。そして敵方には鳳凰神の化身が存在する。我が方の将兵に与える影響は大きい。動揺した将兵たちに奮戦を促す事は愚策。敵方の方は我が本隊の4倍…) そう家久は撤退を考え始める中、家久の頭の中に響き渡る声があった。 『戦況は最悪の様じゃな。移香斎の事は儂に任せておけ。家久よ一先ず撤退せよ』 という声は、家久が聞き覚えある声で、その声に家久は頷き応じていた。 そう声の主は妖魔鬼神・塩冶興久であり、家久は妖魔鬼神・塩冶興久の判断に同意し、撤退を決断したのである。 撤退を決断した後の家久の行動は早く、軍略家としての頭脳と力を存分に働かせ被害を最小限に抑えて、追いすがる尼子方を巧みな戦術でいなして、気付けば見事に戦場から撤退していた。 「見事ですな付け入る隙が見当たりません」 家久の見事な撤退戦の戦術に、感服した信繁は、そう呟き、そんな信繁に喜内が。 「称賛すべき将だが今後の事を考えるとやり難い相手だな」 と言い、これに信繁は頷き応じ、そんな中、満延だけはもの足りない様で。 「源右衛門殿の仇討ち。それと儂の雪辱戦としては物足りなぬ。次は家久と義弘の首はこの手であげねば気が治まらぬわい」 と、満延は息巻いていた。 この戦いで島津軍は2000近い将兵を失い、5000あった軍勢を3000程に減らし撤退し、尼子軍は殆ど損害を出さなかったが、渡部源右衛門という八極拳部隊を率いる将を牛っていた。 島津軍が撤退した事で、すぐ近くに敵が存在しなくなり、安来への上陸は順調に進み3万4000の軍勢は、月山富田城へ援軍するための支度へととりかかったのである。
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