第4章~立ちはだかる妖魔の無双の者~

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一方、飯梨川の上流から進軍する島津軍5000の将兵を率いる、島津家久は、尼子軍の動きを馬を操り、馬上から遠望しながら。 「気付かれたか…」 そう呟き更に。 「できれば気付かれぬ方がやりやすかったが…まぁもともとその意思が我々にないのだから仕方ない事だがな」 そう家久は続けた。 そう言う家久に馬を寄せる者があった。 愛洲移香斎である。 移香斎は家久の乗る馬に自らが乗る馬を寄せると。 「尼子方は安来に陣取りして月山富田城を援軍する支度をするのでしょうが…如何なさる。見たところ安来に上陸したのは1万から2万といったところですな。まともにやり合うのは我が方の将兵の数では無謀というもの。なんならいきなり拙者が参り飯梨川東岸に布陣する尼子方の部隊を蹴散らして尼子方の出方を見ては如何でしょうか?」 と、移香斎は家久に進言した。 すると家久は暫し考えた後。 「うむ。我らが妖魔勢力となって将兵たちは強靭であるが。兵数には差がある。月山富田城攻めで示したお主たちの強さは尼子の援軍の将兵たちは知らないから…うむ頼む」 そう家久は言い、これに移香斎は頷き応じると、馬腹を蹴り、馬を駆けさせて軍勢の先頭へと向かった。 家久率いる島津軍5000は、尼子軍の渡部・延沢両八極拳部隊4000が布陣する飯梨川の対岸に、布陣を開始したのである。 その様子を飯梨川の東岸に布陣する、渡部隊を率いる、渡部源右衛門は、布陣する島津軍の様子を見て。 「奴らやる気か…?」 そう源右衛門は呟き、そんな中、隊を配下の者に任せた延沢満延が、馬を跳ばして、渡部隊へとやって来て下馬をすると、源右衛門の側へと歩み寄り。 「やる気の様じゃな。奴らは相当の愚か者か。それとも噂の無双の者が従軍しているか。源右衛門殿は如何に思う?」 と、満延は源右衛門に問いかけた。 この満延の問いかけに、源右衛門は腕組みをして、飯梨川の西岸に布陣を始める、島津軍を見据えながら。 「見たところ島津軍の将兵の数は5000程度と見た。あの数で我らと戦を始めるとは…愚かしい事だな…」 そう源右衛門は答えつつ、飯梨川の上流に視線を移して更に。 「後続する軍勢もないところを見ると…。対岸の島津軍だけの様だ。そうなるとやはり噂の無双の者があの軍勢に存在すると見て間違いだろう。満延殿。余り血気にはやるなよ」 そう源右衛門は続けた。
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