第4章~立ちはだかる妖魔の無双の者~

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~飯梨川の戦い~ 源右衛門が満延に対して「血気に逸るな」と、言ったのには訳があり、それは八極拳衆の将の中でも、自らが1番強い事を証明したがり、鍛練の場では常に誰かしらを捕まえては試合を申し込み、勝ちを得ていた。 まだ源右衛門と満延とは試合をしていない、それは源右衛門が満延と試合して源右衛門が勝つ事を、源右衛門自身がわかっていたからで、源右衛門は満延の弱点を既に他の者と試合しているのを見分して、見抜いていたからで、満延から試合を申し込まれても、自分が勝って満延の自信を削ぐ事を源右衛門はしたくなかったからである。 それはさておき、満延の問いかけに対して、源右衛門の返答を聞いた満延は。 「ふん無双の者など某にかかれば虫けらの様なもの。それを証明してやるわい」 そう言い残して、満延は自陣へと馬に乗って戻っていき、その姿を見送る源右衛門は。 「これは儂が援護せねば一気に敵方の無双の者に駆逐されかねぬな…」 そう呟く源右衛門は、何か覚悟を決めた様に天空を仰ぎ見て。 「剛志様。それと信澄様…」 そう言った源右衛門は、その後の言葉をボソボソと口にしてから、背後に控える配下の将兵たちに迎撃の支度を整えさせたのである。 布陣を終えた島津軍は、じっと動かずにいた。 そんな島津軍の様子を見据える満延は。 「何じゃ奴らはやる気が有るのか無いのかッ」 と、苛立ち始めていた。 満延が苛立つのも無理はなく、島津軍は布陣を終えても、飯梨川を渡る様子もなく、ただじっと動かずにいて、まるで山の如くであった。 それが満延には「我らは何時でも攻めかかれる。我らは攻められても動じぬ。我らは将兵の数に狼狽えぬ。何時でもかかってくるがよい」と、挑発されている様に移ったのである。 「おのれッ!我ら八極拳部隊の強さを思い知らせてやるッ!」 そう言い放った満延は、背後の率いる将兵たちの方を振り返り。 「皆の者ッ!我に続けッ!」 と、率いる将兵たちの先鋒となって、満延は馬腹を蹴り、飯梨川へと入り、対岸に布陣する島津軍を目指して、馬を駆けさせ、満延に引き摺られる様に、延沢隊の将兵たちも。 「おおッ!」 と、応じて満延に続いて、飯梨川へと入っていったのである。
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