第4章~立ちはだかる妖魔の無双の者~

8/39
前へ
/39ページ
次へ
愛洲移香斎と名乗った仁王立ちする武者、満延が愛洲移香斎の名を知らない筈もなく、満延は移香斎が影流・陰流の始祖の剣豪である事は知っている、既に亡くなっていて、妖魔鬼神によって妖魔の者として黄泉の国から甦って、その力も更に増して戦国の世に降臨した事も、主君尼子剛志が鳳凰神・宇喜多直家から受けた情報を聞き知っていた。 だが、実際に目の前にした満延は、初手を難なくかわされたが、恐怖心はなくむしろ嬉しさが、心の奥底から込み上げて来るのを感じていて、満延は体勢を立て直すとニヤリとして。 「そうでなくては面白くない」 そう言いながら、移香斎を見据えると、右手から左手に槍を持ち替え更に。 「儂の腕前があの程度だと思われては困るな~。儂の腕前をしかと確めよッ!」 そう言い放った満延は、再び移香斎へと挑みかかったのである。 そして、 移香斎に挑みかかった満延は、左手に持つ槍を鋭く突き出し、この満延の突きの攻撃に移香斎は。 「同じ事をッ。お主には学習能力がないのかッ」 と、吐き捨てると、満延の突き出した槍を難なくかわしたが…。 満延はニヤリとして。 「フッ。かかったなッ」 と、満延が言ったかと思うと、気付けば移香斎は体をくの字に曲げ、後方へと弾き飛ばされ地べたを転げていた。 満延は、左手に槍を持ち替えた上で、槍を鋭く突き、移香斎の注意力を槍に向けさせて、素早く移香斎の懐に入り込み、空いている右手を移香斎の腹部に当てて、移香斎に発勁をくらわせていたのである。 地べたに転がる移香斎を見据えた、満延は、どうだと言わんばかりの表情でいた。 後方に控えて、満延と移香斎の闘いを見ていた島津軍の先陣部隊の将兵たちも、地べたに転がる移香斎の状況を見て、まさかという表情でいた。 それは先日の月山富田城攻めでは、月山富田城にあった八極拳部隊を散々に叩き、八極拳衆の将に手傷を負わせた無双の者の1人である移香斎が地べたを転げて、戦況はどう見ても、移香斎の方が分が悪い様に、島津軍先陣部隊の将兵たちには写ったからである。 そんな中、地べたに転げていた移香斎がムクリと起き上がり、首をポキポキと鳴らした後。 「なるほどこれが八極拳衆が使う発勁なる技か…」 そう言ってニヤリとした移香斎は更に。 「効かぬな」 と、言い放ったのである。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加