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発勁をくらいながら「効かぬ」と、移香斎が言い放った事に、満延は表情を曇らせ。
「まさか…今の発勁は確実に入っていた…それなのに…信じられん…馬鹿な…」
と、満延の顔から血の気が見る見る内に引いていき、満延の顔が青ざめているのが見てとれた。
そんな満延を見て移香斎はニヤリとして。
「自らが自信ある技が効かぬとわかって自信を喪失したか…フフッ。無理もないな。如何いたす。逃げてもかまわぬぞ。儂の目的の相手はお主ではないからな」
と、移香斎は満延に逃げてもかまわぬと言ったのである。
この移香斎の発言が、満延の自尊心を傷付け、それは満延自身、自分への不甲斐なさと移香斎の余裕さが、許せずに怒りへと変わり。
「儂に逃げろじゃとッ」
と、語気を荒らげ、満延は冷静さを忘れ、プッツン切れてしまっていた。
「己ッ!なめよってッ!儂に逃げるなどという選択肢はないわッ!」
そう言い放った満延は、我を忘れて槍をブンブンと振り回すと、再び移香斎へと挑みかかったのである。
そんな満延に対して移香斎は。
「愚かな…。儂はお主に逃げる機会を与えてやったのだがな。死に急ぐ奴が儂は嫌いでのう」
そう言って移香斎は、腰の太刀をサラリと抜き、挑みかかってくる満延を、迎え撃つ体勢をとったのである。
そんな中である突然、満延と移香斎の間に割り込む者があった。
その者とは渡部源右衛門である。
源右衛門は、満延と移香斎の間に割り込むと。
「満延殿ッ。冷静になられよッ。相手は容易に倒せる者ではないッ。ここは一旦ッ。飯梨川の東岸まで後退いたすのだッ」
と、馬上から移香斎を威嚇しつつ、満延に冷静になって後退する様に説得した。
源右衛門の説得に既に冷静さを失っていた満延は。
「ふざけるなッ!儂に後退しろじゃとッ!これ程までに侮辱されて黙って後退などできるものかッ!」
そう吐き捨て、源右衛門の説得に応じ様としない、そんな満延に対して源右衛門は必死になり。
「満延殿ッ!今のお主は冷静さを失っているッ!このまま彼奴と闘ったところでまともにやり合えるはずはないッ!ここは一旦後退いたして冷静なるべきじゃッ!」
そう語気を強め満延を説得するが、源右衛門の説得を聞き入れる冷静さを、満延は持ち合わせなく。
「ええいッ!退かぬかッ!退かぬなら貴様を倒すまでぞッ!」
と、満延は言い放った。
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