第1章

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 放課後。  校内にチャイムの音が鳴り響く。  教室で本を読んでいた私は、そろそろ帰り支度をしようと立ち上がった。  もう、部活終わったかな……? 「あれ、何だよ大原。まだ残ってたのか?」 「あっ……瀬戸くん」 「早く帰らねーと、正門閉められるぞ」 「う、うん。もう帰るよ……」    私が1人で教室に残っていたのは、瀬戸くんが部活を終えるのを待っていたからだよ。 「あー、腹減ったー」 「今日もお疲れ様だね」  そう。  こんなふうに簡単なやりとりだけでいい。  瀬戸くんと、ほんの少し言葉を交わすだけで、私の心は満たされてゆく。 「……ほら、早くしろよ」 「えっ」 「暗くなってくるとあぶねーから、駅まで送る」 「で、でも……瀬戸くんって、私と反対方向に帰るよね?」 「いいから。さっさと行くぞ」 「あ……ま、待って!」  予想もしていなかった展開に、胸が、きゅっとしめつけられた。
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