89人が本棚に入れています
本棚に追加
距離が離れた分、二人でいられる時は本当に嬉しそうな顔をしてくれた。
ぎこちないながらも、おずおずと触れ合いを求めてきたキミに、私が恋を自覚するようになるまで、そう時間はかからなかった。
でも、三年も経てば落ち着く。
キミが優しいのは変わらないはずなのに、私の心はどんどん重たくなっていく。
「そろそろ支度するか」
時計を確認して、キミが腰を上げる。
一ヶ月に一度は会うようにしているとはいえ、その時間は短く呆気ない。
もう帰らなきゃいけないと思う度に、体の奥深くからじわじわと熱いものがこみ上げて来てしまう。
ちょうど今みたいに。
顔を背け、必死で唇を噛む私に、キミが目を留めるのが分かって、私は諦めて苦笑いで誤魔化す。
「……私、こんな自分ヤダ」
サバサバしてるのが長所だと思ってたはずなのに、最近はグジグジ悩んでばっかりだ。
帰る時間が近付いただけで泣くとか、有り得ない。
私は決してこんなに重たい女じゃなかったはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!