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「おーう、来てくれたかソラ坊!」
村の唯一の出入口でソラが頭を撫でながら馬車に近づく。
それに気付いた三十過ぎの麦わら帽子を被りゴリゴリに農業で鍛えたかのような肉体を見せびらかさんとするかのようなタンクトップの男が手を振りながら歓迎する。
この男がアイラが言っていたリチャードである、高貴な名前に似つかわしい暑苦しいおっさん。
ちなみに麦わら帽子を取ると天候が晴れている場合みんなが眩しくて迷惑がかかるくらいツルツルである。
「姉ちゃんに問答無用で頼まれただけだ、ボランティアでな!!!」
ムキャーっと言いながら馬車に荷物を乗せるのを手伝う。
「今日はえらい重くね!?」
「ガハハハハ、なんだソラ坊。いっつも鍛えてるのが飾りかー?」
「んな訳あるかっ、フギィーーー!」
「そりゃただの漬物の重石がわりにしとるやつだ、いらんぞソラ坊」
「まっぎらわしいもんここに置くな!オモッ!!」
無事に荷物を乗せた馬車が村を出発する。
リチャードはガタイヤバイ、ムサイの男なので隣に座ると肩幅もありすぎて狭い。
なのでソラはいつも荷台の上に寝っ転がるように乗る。
「アイラにちゃんと伝えたのか?」
気さくでがさつな喋りのリチャードが偉く真剣に話しかける。
「、、、何を?」
「とぼけるなよ、ガハハ!」
「、、、?」
「おめぇーも親父みたいに竜騎士になりてーんだろ?」
「、、、」
竜騎士、ソラの年頃には竜騎士になれる試験がある。
大体の騎士団員は16から入団し、そして国を守る。
その年齢を超えて入団してくるものもいるが、戦乱時代が終わった今はキャリア年数がものを言う。
1年遅れるということは出世も1年遅くなるということだ。
しかももうじき竜騎士入団試験の締め切りが来てしまう。
ソラは弟同然に家族として育ててくれたアイラに言えないでいた。
「別にいいだろ
か「ずっと竜騎士になりたくて鍛えてたんだろ?確かにアイラは実の親は戦乱時代終期に戦死したから反対するかもしれないが、それじゃあおめぇーはいつまでたっても外を知らないままになるぞ?
脳筋の癖にと思いながら図星を突かれる。
「俺は元々農業継ぐからよ?竜騎士団には、三年くらいしかいなかったけどもよ。世界ってひれぇーぜ、ガハハ!」
「、、、わかってるよゴリラ」
「誰がゴリラじゃ!ハゲ!」
「ハゲはてめぇーだろ!!」
「あっ、、、」
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