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バンっとドアが空き、振り返ると
「ふっくん大変!シホちゃんが」
慌てて入ってきたのは祐樹と文江だった。
「一緒に歩いていたら、突然、壁に吸い込まれて」
「何だって!?シホ!」
「こっちよ。急いで」
壁に集まる
「シホ!聞こえるか!シホ!!」
「なぁ、どうしたんだ?扉なんて叩いて」
寝ぼけ眼な八雲がやってきた
「扉?これ、壁だぞ?」
「は?扉じゃないか。ほら。開くぞ。って、そこに倒れてるのってシホちゃん!?」
外灯の下に志穂が視える
「シホが見えるのか!?俺らには壁にしか見えない。シホがいるなら助けてくれ」
「シホちゃーーーん」
駆け出す八雲
八雲は壁を透くように入っていった。まるで壁がないように。
そこは水路だった。闇の中で、舟に乗る場所だけに外灯が一本立っている
「シホちゃん!シホちゃん!」
志穂の身体を強く揺さぶる八雲
「ん・・・ヤクモ・・さん?」
「良かった。倒れてたからびっくりしたよ」
「ここは?」
「わかんない水路みたいだけど」
その場を見渡す八雲
後ろを見ると壁なのだろうか、入口なのだろうか、皆が叫び交じりで一生懸命、叩いている
「ひとまず、ここを出よう。僕たちだけじゃ危ない」
志穂を支えながらみんなの前に出ると、何かが邪魔した
ボコッボコボコッ
まるで水面を触っているかのような感触だ
帰れない
「フヒトー!!これ、なんとかしろ!!!」
どうやら、こちらの声は聞こえないようで、まだ、皆、叫びながら叩いている
『(エトワール)』
「え?」
背後、闇の中の水路の奥から声がした
『(エトワール。来て・・・助けて)』
水路の奥をぼーっと見つめる志穂。
「シホちゃん?どうしたの?」
「声がするの。行かなければいけません」
舟に乗り込もうとする志穂
「ちょっと、ちょっと!」
『(エトワール。早く・・・)』
志穂が小舟に乗ると、舟は自然と動き始めた
「シホちゃん!あ~くそっ」
飛び乗る八雲だった
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